dyeing / 染色について SOME-IRO catarogue
◆ 染色は目的や表現手法に応じて、草木染めと化学染料による手染めとを使い分けて行っています。
◎ 草木染め・・・草木染め独特な柔らかい自然な色合いが特徴。シルクの多い生地に適しています。ここで使われている草木染めは、いずれも堅牢度の高いものです。
AI / 藍
天空の青い空、紺碧の海、青色に包まれた私達の地球。青は人間が自然と共に生きていく中で最もなじみ易い色です。太古の昔より衣服における青は藍によって染められました。日本ではタデ科の植物、タデアイを使い藍染めとして独自に発展してきました。藍を含む植物はタデアイの他にも世界中に様々あります。いつもは、インド藍を使って藍の青を染めています。
AKANE / 茜
茜草は山野に自生する蔓性多年草で、秋には小さな白い花を咲かせます。その根が赤いため”赤根”と呼ばれました。乾燥させた根をたくさん鍋に入れ煮出していくと濃厚な赤い染液ができます。この液で布地を染めます。媒染はアルミで行いました。夕焼け空のようなやや黄味を帯びた赤い色に染まります。これが茜色です。 日本茜とインド茜をミックスして染めています。
UME / 梅
梅の木の枝を細かく切ってそれを煮出します。媒染はアルミを使います。上品な淡いベージュ色に染まります。古来淡く染めた赤味の薄茶色を梅染といいます。
COCHINEAL / コチニール
ペルー、メキシコ原産のウチワサボテンにつくカイガラムシの一種で、産卵前の雌虫を集めて熱湯に通し蒸気をかけて乾燥させたものです。赤い色素が煮出されて、アルミと銅の媒染で紫がかった赤を発色します。この色を古来山葡萄の実の色から葡萄色と呼んでいます。 虫を使った草木染めというのは植物から動物へ生命の循環を感じさせるような不思議な染めです。
KOGANEBANA / 小金花
中国北部原産のシソ科の植物で、根は黄芩(オウゴン)の名で薬用として用いられます。夏に紫紅色の小花が咲きます。コガネは根が黄色なのでつけられました。染めるときも薬草として売られている根をそのまま使います。媒染はアルミで行います。その名のとおりゴールドの光沢を感じさせるような鮮やかな山吹色に染まります。特にシルク原糸を入れた部分の光沢が良い感じに仕上がります。
GOBAISHI / 五倍子
ヌルデの枝にできた虫の瘤を五倍子といい、そこにはタンニンが多く含まれています。これを煮出して染めに使います。鉄媒染を施すと、紫味を帯びた黒鼠色に染まります。古来この色を空倍子色(うつぶしいろ)と呼んでいます。 ちなみにこの虫の名前はヌルデノミミフシアブラムシといいます。この虫が樹液を吸うためにつけた刺し傷が瘤になり、それが草木染めに役立つなんてとても不思議です。
SUGI / 杉
京都北山杉の赤身の芯だけを使い染めています。大工さんがのこぎりで粉にしてくれたものです。媒染はアルミで行いました。杉にはタンニンが多く含まれていて、淡い赤味を帯びた薄茶色が出ます。これが杉色です。ふつうは樹皮を使いますが、これには赤身の芯材を使います。
SAGE / セージ
南ヨーロッパ原産の多年草でサルビアの一種です。古くから香辛料として使われてきました。ここではハーブ畑から摘み取ってきたセージを使っています。媒染は銅です。これで緑系の色、淡い鶯色がでます。
CLOVE / 丁字
クローブは熱帯原産の常緑高木、そのつぼみを乾燥させたものを丁子香といって古来より有名な香料です。染めに使うときも香辛料として売られているクローブをそのまま使います。鉄で媒染して深い銀鼠色に染まります。丁子染の特徴は何といってもその香りです。染め上がった布からもスパイシーな心地よい香りがしてきます。
DONGURI / 団栗
団栗を大鍋で煮出して濃い茶色の染液を作り、木酢酸鉄に浸しておいた布地をここに入れて染め上げると、青紫味を帯びた鼠色に染まります。これを鳩羽鼠色といい、江戸時代より歌舞伎役者などに好まれた色でした。 団栗は群馬県桐生市にある重要文化財彦部屋敷で去年の秋に採集したものを使っています。このお屋敷、旧武家屋敷ですが地元の染め物業にもゆかりのある史跡です。
MARY GOLD / マリーゴールド
高原のマリーゴールドで普通よりも花が大きく色鮮やかな品種です。花弁が新鮮なうちに天日で良く乾燥させておきます。これを十分煮出して染め液とし媒染には鉄を使います。すると微かにゴールドの光沢が入った深い常磐色に染まります。マリーゴールドの生命エネルギーが感じられるような色が出て感動しました。やはり咲き誇った瞬間の花は最高です。
AI+KOGANEBANA / 藍と小金花
藍で染め上げた布を小金花の染め液でもう一度染めます。すると青から緑へとうっとりするような色の変化を見せながら染まっていきます。 草木にふつうな緑色ですが、草木染でこの緑を出すことはとても難しいことです。今回のように藍の青色と小金花のような黄色染めを合わせて緑をつくり出します。
◎ 化学染料・・・ねらい通りの色を正確に作り出し、微妙な色彩表現をするのに適しています。羊毛もしっかり染めることが出来ます。化学染料を「つくる」色とすれば、草木染めは「もらう」色といえます。